看護師さんが知らないと損するコツを臨床工学技士が伝授します

毎日多くの看護師さんや先生から医療機器の使用方法や操作のコツについて相談を受けます。頂いた相談に対する答えをブログを通してみなさんに伝えることにより、少しでも多くの人の悩みや疑問を解消できるお手伝ができればと思いブログの開設を行いました。

病院内での酸素ボンベの正しい管理方法について

今回は医療ガスボンベ、そのなかでも酸素ボンベを中心とした保管方法についてお話していきます。

 

 

f:id:yasashi-kiki:20190222024400j:plain

 

 

病院内では酸素使用中の患者さんの検査移動や搬送などで日常的に酸素ボンベを使用することがあると思います。

f:id:yasashi-kiki:20180531111047j:plain 

酸素ボンベの使用頻度が多い病棟では倉庫に多くのボンベを保管していると思います。また、使用頻度が少ない病棟や外来でも、緊急時に使用できるよう数本保管していることが多く、どの病棟でも間違った保管方法をしていると思わぬところで事故が起きてしまうことがありますので正しい管理が必要になります。

 

 

医療用ガスボンベの管理方法について説明していきたいと思います。

 

 

 

1. 医療用ガスボンベの種類

 

病院で使用されている主な医療ガスボンベの種類は、酸素、亜酸化窒素、窒素、二酸化炭素、空気、エチレンオキサイドガスなどがあります。

 

医療用ガスボンベの色は充填されているガスの種類によって決まっています。

 

 

医療用ガスボンベを使用する際、特に注意しなければいけない点として、壁配管の色とボンベの色が異なっているためガスボンベの取り違えをしてしまわないことです。

酸素の壁配管の色が緑色に対して、ボンベはとなっています。

二酸化炭素の壁配管の色は橙色に対して、ボンベはとなっています。

 

 

過去に、酸素ボンベを取りに行ったとき、酸素の壁配管の色が緑なのでボンベの色も緑色と勘違いしたことで二酸化炭素ボンベ を持ってきてしまい、患者さんに使用してなくなってしなったという事故も報告されていますので、十分な注意が必要です。

 

f:id:yasashi-kiki:20190312130808p:plain

 

当院では上記の医療用ガスボンベの種類の案内をガスボンベ置き場に設置して間違いが起きにくい取り組みをしています。

 

 

 

2.保管場所

 

ボンベの周囲2m以内は火気の使用を禁止し、引火性、発火性のものは置かず、室温は40 ℃以下で通気性のよいところに保管します。また、ガスは間違って持ち出ししないよう種類ごとに区別して保管します。

 

ボンベが倒れて骨折したというアクシデントも報告するされています。専用のラックに入れたり、チェーンで固定して倒れないような工夫が必要になります。

f:id:yasashi-kiki:20190309005139p:plain

 

保管場所の注意点①

酸素ボンベを使用して搬送する頻度が多い場合、持ち出しやすい場所に保管したくなるかもしれませんが、廊下の一部に置くと患者さんが触れて酸素を流してしまったり、ボンベが倒れたり、場合によっては開封時の圧力でボンベが飛んで怪我をしてしまう危険性があります。

 

f:id:yasashi-kiki:20190309063838p:plain

 

 

さらに、取りやすいからと手すりに置いている事があるかもしれません。手すりは患者さんの歩行の手助けや転倒防止のためにあります。ボンベがあるために患者さんが通れなかったり、転倒してしまうという事が無いようにしなければいけませんね。

f:id:yasashi-kiki:20190309062153p:plain

廊下や病室の一部など、患者さんが触れてししまう危険性がある場所では医療用ボンベの保管は行わないようにしましょう。 

 

 

保管場所の注意点②

ボンベの上に重い物品を置いた場合、地震発生時などに落ちてきてボンベが破損してしまう事が考えられます。ボンベが破損すると飛んだり、回転したりしてスタッフや患者さんが大怪我をしてしいますので、場所をずらして保管するようにしましょう。

f:id:yasashi-kiki:20190309074243p:plain

 

3.ボンベ耐圧検査 

医療機器は1年に一回以上点検を行なっている機器が多いと思います。医療ボンベも医療機器と同じように容器が所定の圧力に耐えられるものかどうかを確認する耐圧検査(正式名称は容器再検査)を定期的に行わなければいけません。

f:id:yasashi-kiki:20190310011830p:plain



 

500Lのボンベの場合、1989年3月以前に製造されたボンベの耐圧検査は3年毎、1989年4月以降は5年毎の検査が必要になり、ボンベによっては記入されているものもあります。

 

 

f:id:yasashi-kiki:20190309150733p:plain

 

 

容器検査年月は下の図のように刻印されています。下の場合は2015年10月に検査を行なったという事になりますので、そこから次回の耐圧検査を行わなければいけない日程がわかると思います。

 

f:id:yasashi-kiki:20190309151734p:plain

 

耐圧検査を行うと、外観クリーニングも行います。耐圧検査が3年毎のものは30年以上前に作成されていますが、新品のように綺麗に見えますね。

f:id:yasashi-kiki:20190309145723p:plain

 

 

4.ガスボンベ破裂事故

 

酸素ボンベの破裂によって死亡事故も発生しています。

f:id:yasashi-kiki:20190310233435j:plain

 

 ボンベが爆発すると複数の人が大怪我や死亡してしまう危険性があり、放置ボンベの危険性について多くの案内が出ています。

f:id:yasashi-kiki:20190312112327j:plain

 

 使用していないから大丈夫と思い、何年もボンベを放置すると一部が腐食して爆発する危険性がありますので、3年または5年毎の検査を行うようにしましょう。

 

 

5.使用後のレギュレーター

 

使用後のボンベはガス栓を閉じ、レギュレター内に溜まっているガスを放出させ、圧が0になるようにします。 

 

f:id:yasashi-kiki:20190310014713p:plain

 

ガスメーターに圧力が掛かったままだと、ボンベバルブが閉じていても開いていると勘違いして使用してしまい、患者さんが低酸素血症になったアクシデントも数多く報告されています。

f:id:yasashi-kiki:20180531214419p:plain f:id:yasashi-kiki:20180531171706p:plain

 

 

また、圧力メーター破損によりインジケータが動かない事があります。

f:id:yasashi-kiki:20190312114246j:plain

この場合、圧力メーターを見ると酸素残量ががあるように見えてしまいます。このまま使用してしまうと酸素残量が無くなっても気付きません。SPO2が下がったので酸素流量をあげても残量が無いため改善する事はありません。

このような事がないよう、使用後は圧力表示が0になることを確認しましょう。
 f:id:yasashi-kiki:20190310014713p:plain

 

 

 

下のレギュレーターは同じものになります。

f:id:yasashi-kiki:20190312120354p:plain

f:id:yasashi-kiki:20190312120426p:plain


圧力メーターの破損により内部の圧表示部がズレてしまう事があります。上の図の場合、ボンベに接続していなくとも圧力5が掛かっているように見えてしまいます。

 

圧力メーターが破損していないことを確認する事ができるのは圧力が0になる時だけです。使用後はレギュレーター内部に溜まっているガスを排気し、圧力が0になることを確認しましょう。

 

 

最後に

 酸素ボンベの使用間違いによっては重大なアクシデントが発生してしまう事があります。一般的な酸素ボンベ勉強会では使用方法を中心に開催されることが多いと思います。

 

www.iryoukiki.me

 しかし、正しい管理方法を行なっていないとボンベの取り違え事故や、使用中の残量不足になってしまう危険性があります。安全な医療を提供するためには、酸素ボンベの正しい管理を行う必要があります。

 

 

 


人気ブログランキング