シリンジポンプは輸液ポンプと違って気泡検知器が付いていないため、セッティングしたシリンジの中に空気が入っていると患者さんに空気を送ってしまう危険性があります。シリンジポンプにシリンジをセッティングする際に手技的なミスが発生するとシリンジに空気が入ってしまうことがあります。今回はシリンジに空気が入ってしまう原因と対策について説明していきたいと思います。
重力による空気混入
シリンジに薬液を充填し、シリンジ内を薬液だけで満たした場合でも、シリンジを縦にすると重量で薬液が下に行こうとするためシリンジ先端に空気が入ってくることがあります。
シリンジポンプへのセッティングミスによる空気混入
シリンジの薬液が無くなって交換する際は、シリンジから延長チューブを外して新しいシリンジに付け替えます。
古いシリンジを外したら、新しいシリンジをシリンジポンプの上に置きます。
次に内筒をセッティングしていきます。
その際に内筒とスライダーユニット部に隙間があると、内筒が引っ張られ空気が混入してしまうことがあります。
内筒をセッティングするときは空気混入を防ぐためにスライダーユニットと密接させてから抑えるようにしましょう。
次に、外筒のフランジをスリットに入れて固定します。この時に隙間ができてしまいます。隙間ができた状態で送液を開始すると薬液が投与されない時間が発生し、設定によっては数十分送液されないこともあるため、早送りをして隙間をなくすようにします。
早送りをせずにフランジの隙間がある状態でシリンジと延長チューブを接続した場合で、シリンジ外筒チューブ側に引っ張ってしまうと外筒が動いて空気が混入してしまいます。
私の検証では、50mlのシリンジを薬液で満たした状態から、セッティング時に今回紹介した操作ミス事例を全て発生させると最大で2.1mlの空気が混入してしまいます。
調剤場所やベッドサイドでの認証後にシリンジポンプまで移動する際に空気が混入した場合にはこれ以上の空気が混入してしまう危険性があります。
空気が入った状態で薬液投与した場合、患者さんに送られる薬液量は設定と誤差が生じるのではないかと疑問に思われる方もいらっしゃると思います。私の検証したところでは、ほぼ設定速度通りに投与されましたので、投与速度に関しては問題ありません。
しかし、患者さんに空気が送られる危険性があります。
さいごに
シリンジポンプには気泡検知器が付いていないため、シリンジ内に空気が入ってしまうと患者さんに空気が投与され、重大なアクシデントが発生してしまう危険性があります。夜間暗い場所で調剤やシリンジ付け替えを行うと空気混入の危険性が高くなってしまうため十分注意して行うようにしましょう。
また、定期的な残量確認を行うことで、投与量の確認だけでなく空気混入などのアクシデントにも気付きやすくなりますので、定期的な確認も怠らないようにしましょう。