看護師さんが知らないと損するコツを臨床工学技士が伝授します

毎日多くの看護師さんや先生から医療機器の使用方法や操作のコツについて相談を受けます。頂いた相談に対する答えをブログを通してみなさんに伝えることにより、少しでも多くの人の悩みや疑問を解消できるお手伝ができればと思いブログの開設を行いました。

シリンジポンプにセッティングしたシリンジの中に空気が入ってしまうことがある??シリンジの中に空気が入る原因と対策について

シリンジポンプは輸液ポンプと違って気泡検知器が付いていないため、セッティングしたシリンジの中に空気が入っていると患者さんに空気を送ってしまう危険性があります。シリンジポンプにシリンジをセッティングする際に手技的なミスが発生するとシリンジに空気が入ってしまうことがあります。今回はシリンジに空気が入ってしまう原因と対策について説明していきたいと思います。

シリンジ内への空気混入

 

重力による空気混入

シリンジに薬液を充填し、シリンジ内を薬液だけで満たした場合でも、シリンジを縦にすると重量で薬液が下に行こうとするためシリンジ先端に空気が入ってくることがあります。

 

 

重力による薬液の移動により空気混入

 

シリンジポンプへのセッティングミスによる空気混入

シリンジの薬液が無くなって交換する際は、シリンジから延長チューブを外して新しいシリンジに付け替えます。

古いシリンジを外したら、新しいシリンジをシリンジポンプの上に置きます。

 

シリンジポンプへのシリンジセッティング

次に内筒をセッティングしていきます。

その際に内筒とスライダーユニット部に隙間があると、内筒が引っ張られ空気が混入してしまうことがあります。

 

内筒セッティング

内筒が引かれて空気が混入する

シリンジ内への空気混入

 

内筒をセッティングするときは空気混入を防ぐためにスライダーユニットと密接させてから抑えるようにしましょう。

正しい内筒セッティングの仕方

 

 

次に、外筒のフランジをスリットに入れて固定します。この時に隙間ができてしまいます。隙間ができた状態で送液を開始すると薬液が投与されない時間が発生し、設定によっては数十分送液されないこともあるため、早送りをして隙間をなくすようにします。

フランジのセッティング(隙間あり)

フランジのセッティング(隙間なし)

早送りをせずにフランジの隙間がある状態でシリンジと延長チューブを接続した場合で、シリンジ外筒チューブ側に引っ張ってしまうと外筒が動いて空気が混入してしまいます。

シリンジと延長チューブの接続

私の検証では、50mlのシリンジを薬液で満たした状態から、セッティング時に今回紹介した操作ミス事例を全て発生させると最大で2.1mlの空気が混入してしまいます。

調剤場所やベッドサイドでの認証後にシリンジポンプまで移動する際に空気が混入した場合にはこれ以上の空気が混入してしまう危険性があります。

シリンジ内に大量の空気混入

空気が入った状態で薬液投与した場合、患者さんに送られる薬液量は設定と誤差が生じるのではないかと疑問に思われる方もいらっしゃると思います。私の検証したところでは、ほぼ設定速度通りに投与されましたので、投与速度に関しては問題ありません。

しかし、患者さんに空気が送られる危険性があります。

 


さいごに
シリンジポンプには気泡検知器が付いていないため、シリンジ内に空気が入ってしまうと患者さんに空気が投与され、重大なアクシデントが発生してしまう危険性があります。夜間暗い場所で調剤やシリンジ付け替えを行うと空気混入の危険性が高くなってしまうため十分注意して行うようにしましょう。
また、定期的な残量確認を行うことで、投与量の確認だけでなく空気混入などのアクシデントにも気付きやすくなりますので、定期的な確認も怠らないようにしましょう。