静脈血栓塞栓症予防には弾性ストッキング・フットポンプ(間歇的空気圧迫法)・薬物投与があります。弾性ストッキングやフットポンプは正しい装着を行わないと効果を発揮しないだけでなく、患者さんに損傷を起こしてしまうこともありますので正しい使用方法や異常時の発生時対応を理解する必要があります。
今回は静脈血栓塞栓症(VTE)予防に使用するフットポンプのリークアラーム(空気漏れ)対応方法についてお話していきます。
説明に使用するフットポンプはカーディナルヘルスのSCD700を用いました。
フットポンプ動作時のリークアラーム
フットポンプの操作方法はシンプルで、足にスリーブを巻いたあとは電源を入れるだけで稼働が開始されます。
しかし、機器やチューブ、スリーブが破損していると正しく加圧されないことがあります。
電源立ち上げ時にどこかにリークがある場合、膝丈スリーブを装着していてもモニタには足底圧迫用フットカフが表示されることがあります。
☑チェックの隣のボタンを押すと治療が始まってしまいます。この状態では治療効果が薄く、血栓ができてしまう危険性が高くなってしまいます。装着しているスリーブと違う表示がでた場合には機器を使用せず、リーク発生場所を改善させてから使用するようにしましょう。
また、使用中にもリークが発生することがあり、下の写真のような低圧警報が発生しますのでリーク発生場所を確認する必要があります。
リーク発生場所はどこが多い?
当院の場合になりますが、
リークがよく発生する場所は
①本体接続用チューブのスリーブと接続するコネクタ部分。
②本体接続チューブの本体側との接続するコネクタ部分。
③スリーブチューブ部分
になります。
当院でのリーク発生場所で一番多いのは①になり、9割以上を占めています。
次いで②、③の順番で多くなっています。
どの箇所も一見しただけではとてもわかりずらいため、慣れないと異常箇所を発見するまで時間がかかることがあります。
各破損箇所とその発生原因はなぜでしょうか?
①本体接続用チューブのスリーブと接続するコネクタ部分の破損箇所と原因
下の写真は破損したチューブコネクタですが、どこに異常があるのかこの写真からはわかりませんね💦
確認方法はコネクタ部分を持ってチューブを左右に動かしてみます。
破損箇所がある場合はチューブを左右に動かしたときにコネクタ部分が浮いてくるため、折れていることに気づくことができます。真ん中のチューブ部分が破損していることはほぼなく、左右のどちらかが破損していることが多いです。
考えられる原因は、スリーブから本体接続チューブを外す際にチューブの部分を持って引っ張ってしまうからだと思います。チューブを引っ張ると根元部分に強い力が加わり破損してしまいます。特にチューブを斜めに引っ張ると一部分に大きな力が加わるので破損しやすくなってしまします。
対策(正しい外し方)は両方とも白いコネクタ部分を持ち引き抜きます。かなり固いので外しにくいですが、少しだけ左右に振ると外れやすくなると思います。
チューブの方がやりやすく感じてしまうと思います。でも、破損することがありますのでチューブを持つのはやめましょう(ง •_•)ง
②本体接続チューブの本体側との接続するコネクタ部分の破損箇所と原因
②の部分は通常使用では外す必要はありません。しかし、丁寧に清掃するためなのかチューブを外してしまう人がいます。繰り返しているとコネクタ部分のフック部分に破損が生じてしまいます。
また、引き抜くときにチューブを引っ張ってしまうとコネクタからチューブが抜けてしまうことがあります。
対策としては、基本は「本体」から「本体接続チューブ」を抜かないようにしましょう。抜く場合にはチューブは引っ張らず、コネクタ部分を持つようにし、まっすぐに引き抜きます。
③スリーブチューブ部分の破損箇所と原因
スリーブは下の写真のような形状をしています。
空気を送るチューブがどのようになっているのか、中の構造をみてみましょう。空気を送る箇所が3箇所あり、チューブも3本あり、空気漏れや外れがないよう固定されています。
リークがあるときはこのチューブが外れていることがあり、なかでも一番短いチューブが外れていることがあります。
原因は体位交換時などにチューブが引っ張られることや、一時的にスリーブと本体接続チューブを外す際にコネクタを持たずに引き抜くなどを行うとチューブが外れてしまうことがあります。
対策としてはスリーブから本体接続チューブを外す際には必ずコネクタ部分をもって取り外すようにしましょう。
さいごに
今回は当院で発生するフットポンプのリークアラームの原因と対策について説明しました。フットポンプSCD700のリークアラームは「ピッ ・ピッ ・ピッ 」と緊急性が感じにくいアラーム音のため、他の業務を優先してすぐに対応されないこともあるかもしれません。しかし、静脈血栓塞栓症が発症して肺塞栓になると予後が大変悪くなってしまうため、静脈血栓ができないよう、アラームが発生した場合にはすぐに対応することがとでも大切です。
今回説明したことが少しでも皆様のお役に立てて頂ければ嬉しいです😊