看護師さんが知らないと損するコツを臨床工学技士が伝授します

毎日多くの看護師さんや先生から医療機器の使用方法や操作のコツについて相談を受けます。頂いた相談に対する答えをブログを通してみなさんに伝えることにより、少しでも多くの人の悩みや疑問を解消できるお手伝ができればと思いブログの開設を行いました。

人工呼吸器のインシデント・アクシデント事例。人工呼吸器で異常が発生した時にアラームが鳴らないことがある??

人工呼吸器に関するインシデントやアクシデントは多くの施設で経験され、そのほとんどは軽度のアクシデントが多いのではないかと思います。しかし、人工呼吸器は医療機器の中でも高度管理医療機器に分類されるほど、使用者による操作ミスや呼吸器本体などが原因による重大なトラブルが発生すると生命に影響を及ぼす危険性があります。

重大なトラブルを防ぐために、PMDA日本医療機能評価機構より人工呼吸器に関わる死亡事例や多くの施設から報告されている事象に関して医療安全情報として注意喚起がされています。

 

医療安全情報

今回は人工呼吸器の回路の接続外れや回路の緩み、電源接続不良などにより患者さんに何らかの影響があったアクシデント事例についてPMDAと日本医療機能評価機構からの報告を紹介いたします。

 

PMDAからの報告。

2020年4月の臨時号No.1 「人工呼吸器等の取り扱い時の注意について」4ページ中の1と2ページ目

PMDA医療安全情報 臨時号 No.1 2020年4月 1/4ページ

電源が切れてしまうと死亡事故につながってしまうため大変危険ですね💦

 

PMDA医療安全情報 臨時号 No.1 2020年4月 2/4ページ

2020年4月の臨時号No.2 「気管チューブ等の取扱い時の注意」3ページ中の1ページ目と3ページ目を紹介します。

PMDA医療安全情報 臨時号 No.2 2020年4月 1/3ページ

PMDA医療安全情報 臨時号 No.2 2020年4月 3/3ページ



 

日本医療機能評価機構からの報告

2021年7月「医療安全情報 No.176:人工呼吸器の回路の接続外れ」

2017年1月1日から2021年5月末までの間に報告があった39事例の部位と件数の報告がありました。

日本医療機能評価機構 人工呼吸器の接続外れ No.176より

 

回路外れ等があると呼吸を継続することができない場合があるため大変危険ですね。

 

人工呼吸器アクシデントの察知

人工呼吸器に関わるアクシデントの感知は人工呼吸器からのアラーム発生、または生体情報モニタからのアラーム発生で気が付くことがほとんどではないかと思います。

 

人工呼吸器管理に不慣れなスタッフの場合、ベッドサイド脇にいても呼吸器回路外れの異常に気が付かないことがあり、異常感知と異常部位発見までに時間がかかることがあります。

呼吸器回路外れに気が付かないこともある

呼吸器回路外れによるアクシデントは私も何度か経験したことがあります。ICUで人工呼吸器使用中に人工呼吸器からアラームが発生しSPO2が低下しているが原因不明のため応援要請を受けました。確認したところ加湿チャンバーから回路が外れていました。

 

まさか回路のこんなところが抜けているなんて思いもしない箇所でも外れてしまうことがあります。回路のつなぎ目はどこでも外れる可能性がありますので、アラーム発生時は呼吸器の異常を疑うのと一緒に、回路外れも疑って全体を確認するようにしましょう。

回路が外れていると空気が漏れる音が聞こえてきますので、日常的に耳を大きくして確認してみてください。また、人工呼吸器のグラフィックをみると吸気・呼気量からリークに気づきやすくなりますのでグラフィックも活用してみてください。

 

人工呼吸器の不具合報告

人工呼吸器は使用中に回路外れや分時換気量の低下、呼吸回数上昇などが発生した場合アラームでお知らせをしてくれるので離れた場所にいても異常に気付くことができます。

ほとんどの人工呼吸器のアラームは音(聴覚的)と光(視覚的)、グラフィックモニタに文字で発生します。

人工呼吸器アラーム発生

しかし、最近立て続けに複数のメーカーから人工呼吸器のアラームが正常に発生しない不具合報告がありました。

 

V60ベンチレータの不具合

V60ベンチレータ

人工呼吸器とアラームに電力を供給する主電気回路に影響を与える可能性のある潜在的な問題があることが確認され、下記の事象が発生する可能性があります。

1.視覚的及び聴覚的アラームの両方が作動し、人工呼吸器の作動が停止する可能性。

2.視覚的及び聴覚的アラームの両方が作動せず、人工呼吸器の作動が停止(サイレントシ ャットダウン)する可能性。

メーカー情報提供開始:2022年3月23日

 

PB980の不具合

PB980

アラーム状態の間、グラフィックモニタに文字でアラームが表示されるが、聴覚アラームが鳴らない。または、聴覚アラームが鳴らず、さらに視覚的アラームが点灯しない可能性がある。

メーカー情報提供開始:2022年4月7日

 

 

VIVO45の不具合

VIVO45

製造会社の呼吸器テスト中に呼吸器が警報を発することなく換気停止する場合があるという例外的な状態が発見されました。実際の使用中では事例報告されていません。

メーカー情報提供開始:2022年4月12日

 

 

人工呼吸器使用中のモニタリング

上記の不具合が発生した場合、痰詰まりや回路外れなどが原因で患者さんの呼吸状態に異常が発生しても気づきにくくなってしまうため、とても怖いですね。

人工呼吸器に異常がない場合でも患者さんのバイタルが変化することがあるため、人工呼吸器使用中はモ生体情報の心電図・呼吸数・パルスオキシメータによる連続モニタリングをすることが推奨されています。CO2の連続モニタリングも望ましいとされています。

生体情報

離れた場所からも気づきやすくするためセントラルモニタでの管理も推奨されています。

 

セントラルモニタ

 

 

さいごに

人工呼吸器は医療機器だから装着すれば安全に呼吸器の管理をしてくれると思われがちですが、呼吸器本体の異常による動作不良が発生する場合があります。また、操作ミスや回路外れ等により呼吸が継続できなくなってしまう危険性もあります。呼吸状態を把握するために人工呼吸器以外の外部モニタを常時使用する必要があります。

人工呼吸器やモニタのアラームが発生した場合、人工呼吸器異常や患者さん側の要因のみでなく、今回紹介した事例のように回路が外れていることもありますので全体を確認するようにしましょう。