今回はネブライザの特徴と注意点についてお話していきたいと思います。
ネブライザ(吸入器)とは
ネブライザとは薬液や生理食塩水を霧状に変え、気道内の加湿や薬液投与のため用いる吸入器具のことをいいます。
鼻や口から呼吸に合わせて薬液などを気道や肺へ投与でき、副鼻腔炎や気管支炎、肺炎の治療、粘稠な痰を柔らかくして出しやすくしたりする治療などが行えます。
経口薬よりも少ない薬剤で大きな作用があり、直接噴霧できるため即効性があります。
ネブライザの種類
ネブライザの種類にはジェット式(コンプレッサを使用して圧縮空気を送るためコンプレッサ式ともいわれています。)、超音波式、メッシュ式の3種類があり、それぞれに特徴があります。
ジェット式(コンプレッサ式)ネブライザ
圧縮空気を利用して薬液を細かい霧状にして投薬するタイプのネブライザーです。
メリット
ほとんどの吸入薬を使用することができ、メンテナンスも比較的簡単に行えます。
デメリット
圧縮空気を作り出すためにコンプレッサーを作動させるため動作音が大きくなってしまいます。静音設計タイプもありますが、就寝中に使用する場合は音が大きく患児が起きてしまうこともあります。
超音波式ネブライザ
超音波振動によって、薬液を霧状にして噴霧するタイプです。
メリット
①大型でパワーが強いものが多く、長時間の噴霧にも適している。
②粒子が小さいため細気管支・肺胞に薬液が到達できる
デメリット
①使用後の清掃に少し手間がかかる。
②超音波振動で薬液の作用が変化することが危惧されるため使用できる吸入薬が限られていることです。
メッシュ式ネブライザ
振動などにより薬液をメッシュの穴から押し出し、霧を発生させるタイプです。
メリット
①本体を傾けたまま使用することができるので、寝たままの体勢でも吸入しやすいです。
②コンパクトで軽量なため、持ち運びしやすい。
③動作音が静かなため就寝中や外出先でも使用しやすい。
デメリット
①使用できる薬液が限られてしまう。
②粒子の大きさなど他のネブライザより定かになっていない部分がある。
粒子の大きさと到達部位
薬液の到達部位はネブライザ粒子の大きさによって変わります。
①上気道(鼻、口腔、咽、咽頭)は30~70㎛
②気管・気管支は5~10㎛
③主気管支のさらに奥の細気管支は3~5㎛
④肺胞へ到達するには0.5~3μmの粒子であることが必要になります。
薬液を作用させたい場所によって使用するネブライザも変わります。
感染の危険性
ウイルスの大きさは0.02~0.3ミクロン、細菌は0.5~10ミクロン、ネブライザ粒子の大きさは1~15ミクロンです。
ネブライザ粒子に交じって細菌が気道に運ばれて感染を引き起こす危険性があるため、ネブライザは1患者1使用を徹底して清潔なものを常に使用し、滅菌蒸留水や生理食塩液、薬剤などを充填する際は清潔操作を行うよう心掛けましょう。
吸入時の注意点
肺胞まで到達したネブライザ粒子により、肺胞でのガス交換が阻害されて呼吸苦が生じることがあるため、ネブライザー使用中は呼吸状態や顔色などを注意深く観察するようにしましょう。
吐き気や頭痛、呼吸が苦しいなどの症状があるときはすぐに吸入をやめましょう。
人工呼吸器使用中のネブライザは使用できる?
人工呼吸器使用中に痰が粘稠になることがあり、その時にはネブライザを人工呼吸器に接続するためにはどのように行えばよいのか問い合わせを頂くことがあります。
しかし、人工呼吸器使用中にネブライザの使用は推奨されていません。
ネブライザ粒子は小さくすることで細気管支、肺胞まで薬液を到達させることができます。
しかし、人工呼吸器回路内は陽圧になっているためネブライザで粒子を細かくしても、回路内で粒子が結合して大きくなってしまいます。このため呼吸器回路や挿管チューブなどに水滴として付着して薬液の効果はあまりみられなくなってしまいます。
ハイフロー(高流量酸素療法)でネブライザは使用できる?
最近はハイフロー療法を施行中にネブライザを使用したいと希望される施設が増えてきています。
しかし、人工呼吸器と同様、ハイフロー療法も高流量を流すことで回路内が陽圧になってしまうため、ネブライザ粒子が大きくなることが懸念されています。しかしながら、人工呼吸器回路内圧よりも低圧のため、ネブライザ効果を期待して投与している施設もあります。ハイフロー中のネブライザに関して今後研究が進んでいくことを期待しています。
さいごに
ネブライザの治療はご家族や本人で行える難しくない操作になります。しかし、不潔操作を行うと感染の危険性が高くなるため、常に清潔操作を心掛けるようにしましょう。さらに、副作用のリスクもありますので、使用中は呼吸状態の確認を行い、安全に治療がおこなえるようにしていきましょう。
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