看護師さんが知らないと損するコツを臨床工学技士が伝授します

毎日多くの看護師さんや先生から医療機器の使用方法や操作のコツについて相談を受けます。頂いた相談に対する答えをブログを通してみなさんに伝えることにより、少しでも多くの人の悩みや疑問を解消できるお手伝ができればと思いブログの開設を行いました。

人工呼吸器使用中に発生する回路内の結露対策について

人工呼吸器などを使用中、呼吸器回路内に結露が発生して困ってしまうことありませんか?

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結露はどうして発生するの?

空気中の水分は温度によって含ませられる量が違います。高い温度の時ほど多く水分を含むことができ、低い温度では水分量が少なくなります。

 

夏は肌の調子がいいのに、

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冬になると乾燥が気になるは、空気中の水分が少ないためです。

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絶対湿度

1m✖️1m✖️1mの空間に溶け込める最大の水分量を絶対湿度と言います。

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これは、天気予報など一般的に使用される湿度とは異なっています。

 

気温が0℃の場合、空気中には最大4.8g溶け込むことができます。

30℃では30.4gになります。

 

温度(℃)

絶対湿度(g/m3)

0

4.8

10

9.4

20

17.3

30

30.4

37

43.9

40

51.1

 

 

これほど水分量が違うと、肌の状態も大きく変わりますね。

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空気中の湿度(相対湿度)

天気予報などで使用されている湿度は相対湿度と呼ばれています。これは、絶対湿度とは異なり、空気中に含まれている水分量の割合(%)になります。(今後はあえて湿度と記入していきます。)

 

空気中に4.85gの水分が溶け込んでいる場合、天気予報で表示される湿度は下の表のようになります。

 

温度(℃)

最大絶対湿度(g/m3)

水分4.85g時の湿度(%)

0

4.8

100

10

9.4

51.5

20

17.3

28.0

30

30.4

16.0

37

43.9

11.0

40

51.1

9.5


空気中に含まれている水分量が同じでも、気温が違うことで表示される湿度は変わってしまいますね。

 

 

例えば、夏の日、気温が30℃で空気中に4.85gの水分がある場合の湿度は16%でカラッとした天気になりますね。

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しかし、真冬で気温0℃、空気中に4.85gの水分がある場合の湿度は100%になり雨が降ってしまいます。

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呼吸器回路内の結露

これは人工呼吸器の回路内でも同じ現象が起きます。

 

人工呼吸器などを使用する際、乾燥した空気を送らないように加湿チャンバー内の水を温め、加湿された空気を送っています。通常はチャンバ出口37℃、口元40℃設定になっていることが多いです。

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加湿チャンバーで水蒸気になった水達が

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呼吸器回路移動中に周りの室温で冷やされると、空気中に溶け込んでいたものが水滴になってしまいます。 

 

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この水滴が少しずつ集まって呼吸器回路内に結露を作ってしまい、気づかない間に多くの水が溜まってしまいます。 

 

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人工呼吸器回路で結露の発生・溜まりやすい場所

 

人工呼吸器回路で、特に結露が出やすい場所があります。

それは、カテーテルマウントです。(赤丸で囲まれた部分で、チビ蛇腹などと呼ばれている場合もあります)

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 上記の吸気・呼気回路は、空気が冷えて結露が発生しないよう、回路をヒーターで温めているため結露が出にくいように作られていますが、カテーテルマウントはヒーターが入っていないので外気の影響で冷やされてしまい、結露が出やすくなります。

 

 

 呼吸器回路内にも条件が重なると結露が発生する場合があります。この場合、回路の中で一番床に近い部分に水が溜まりやすいくなります。

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呼吸器回路の色々な場所で結露が発生しますが、少しずづ下の方に流れて行って、回路の下部に溜まります。結露がないか確認する場合は、一番床に近い部分を確認して下さい。

 

 

また、下の写真のような吸気側にはヒーターが入っているが、呼気側にはヒータが入っていない回路などもあります。

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 この場合、呼気側回路が冷やされて結露が多く発生するため、水を溜めるウォータートラップが付いています。溜まりすぎると呼吸の妨げになるので、定期的に水の除去が必要になります。

 

  

結露が発生しいやすい時期

結露が発生しやすい時期は冬だと思われている方、多いのではないでしょうか?

 

実は、意外なことに夏にも結露が多く発生します。

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夏になるとエアコンを使用する機会が多くなります。エアコンの冷たい風が呼吸器回路に当たると、中の空気が冷やされ、回路内に結露が発生してしまいます。

 

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結露対策

結露が発生しないようにするためには何点か方法があります。今回は2つご紹介します。

 

①加湿チャンバー出口部と口元の温度差を最大にする。

オートモードの場合、チャンバー出口部と口元の温度差が少ない場合があります。

チャンバー出口部を37℃、口元温度を40℃に固定して温度差を大きくしてあげることで、呼吸器回路内の空気移動中にエアコンの風などが当たって温度が下がっても、チャンバー温度よりも下がらなければ結露は出にくくなります。

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(少し数字が多くなりますので、読むのが面倒ならへ進んでください)

チャンバー出口での37℃は気道と同じ温度になります。口元温度が40℃で暑そうに感じますが、カテーテルマウントで3℃温度が下がり、患者さんに送られる時には快適な温度・湿度になります。

 

結露が発生する原因は、チャンバーで調整された湿度100%が、回路内の空気移動中に冷やされたことによって数字上は湿度120%になります。100%を超えた20%分が結露として出てきます。

 

37℃に含まれる水分量は43.9g。40℃では51.1gまで含ませることができるため、送られる湿度は85.6%になります。

 

回路内の空気移動中に温度が少し下がっても湿度90%前後では結露が発生しません。

 

 

②呼吸器回路にプチプチを巻く

原始的な方法になりますが、保温効果UPと外気の影響を受けにくくすることができます。

 

 

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 AIRVO2の場合などでも結露対策ができます。

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注意点として気を付けていただきたいのが、プチプチを巻いたからといって結露が出ない訳ではありません。プチプチを巻いても結露がでる場合があります。

 

必ず定期的に回路内に水滴がないか確認して下さい。

 

回路全体を厚手の布で覆っている場合もありますが、回路内に水が溜まった時に見えないため透明なプチプチをおすすめします。

 

 

呼吸器回路内に結露が溜まることによって人工呼吸器と自発の呼吸が合わなくなったり、不快感を感じることがあります。また、水蒸気になった水が結露になってしまうことで加湿不足になり、痰が硬くなる危険性があります。

 

患者さんにより快適な呼吸をしてもらうため、結露対策にも気を付けてみて下さい😄

 

 

 


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