看護師さんが知らないと損するコツを臨床工学技士が伝授します

毎日多くの看護師さんや先生から医療機器の使用方法や操作のコツについて相談を受けます。頂いた相談に対する答えをブログを通してみなさんに伝えることにより、少しでも多くの人の悩みや疑問を解消できるお手伝ができればと思いブログの開設を行いました。

病院での停電対策はどのようになっている?停電が起きたらどうなる?

暑い日が続きますね!!

 

夏は好きですが、ここまで暑すぎるのは少し困ります😅

日中、道を5分も歩けば汗が吹き出て全身汗だくになってしまいます。

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この先も35℃を越える猛暑日が続く予定です。

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こんな日はエアコンの効いた家の中でアイスを食べたりしているのが一番ですね。

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ただ、そうなると各家庭・会社などで使用される電力が増えてしまいます。

 

 

2016年から始まっている電力自由化で、一般家庭でも複数ある電力会社から電気代の安い会社を自由に選択することが可能になっています。

 

 

各社で供給量より使用量が増えた場合でも停電が起きないよう、電力会社同士の垣根を超えて電力を融通し合うシステムを採用しています。

 

しかし、使用量が多すぎる場合、安全のために電気を供給しない仕組みになっています。最悪の場合、地域全体で停電が起こらないとも限りません。また、地震などの災害が発生した場合にも停電が起きてしまうことがあります。

 

 

 今回は病院での停電対策と停電時に起きることを書いていきたいと思います。 

 

停電対策①

病院は人命を預かる重要な施設であることから、停電しにくいよう信頼性の高い電力を電力会社と接続しており、原則として契約電力2,000kW以上の場合、特別高圧(7,000Vを超える電圧)を受電する必要があります。

 

信頼性の高い受電方式として、2箇所の変電所から電気を受電する、2回線受電方式や

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ループ受電方式などがあります。(病院の立地によって受けられる受電方式が限られています。)

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停電対策②

停電時でも自家発電になどにより使用が可能な非常用電源が病院に備わっており、医療機器や一部の照明へ電力が供給されるようになっています。

 

ただし、一般病院への医療機器使用のための自家発電機の設置は義務化されておらず、各病院の判断で設けられています。かなり古いデータになりますが、9割ほどの病院などで設置され、12時間以内が約30%、12時間から72時間が55%、72時間以上が5.5%となっています。(自家発電装置の稼働、「24時間以下」が半数◆Vol.4 m3.com)

 

 

災害拠点病院に関しては、厚生労働省災害拠点病院指定要件に、「通常時の6割程度の発電容量のある自家発電機等を保有し、3日分程度の燃料を確保しておくこと」と記載されています。

 

 

コンセントの色の違い

 

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白色は一般家庭と同じ電源(商用電源)になります。病院の周りの地域が停電になると、一緒に停電し、電気が使えなくなってしまいます。

 

赤色は商用電源が停電した時でも使用できる非常電源となっています。ただし、電源供給が開始されるまで少しの間停電します。バッテリがない機器は電源がきれてしまうので注意してください。停電復旧までのは時間は通常は40秒以内となっています。その他にも重要度によって10秒以内、0.5秒以内と合計3種類あります。

  

 緑色は無停電電源になります。バッテリー付きコンセントのようなものと考えてもらえるとわかりやすいかと思います。商用電源が停電した場合でも、一瞬でも停電することなく電気が流れ続けます。一瞬でも電源遮断があると困る手術室等に多く導入されています。

 

 

 

停電が起きた場合

地域で停電が起きた場合、病院内でも停電が起きます。白色コンセントに接続されている機器や一部の照明器具などに電気が流れず機器が止まってしまいます。

 

  

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①生命維持管理装置

病院では、呼吸器や

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透析装置、

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保育器など、数多くの生命維持管理装置が使われています。

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これらの機器が使用できなくなると、患者さんの生命が脅かされてしまいます。

 

医療機器はバッテリを積んでいるものが多くありますが、長時間安全に使用するためには電力の供給が必須になります。最大40秒電源が切れますが、電源非常用コンセントに接続しておくことで停電時にも医療機器が使用できるようになります。

 

バッテリを搭載していない機器は電源の入れ直しが必要になるものがあります。

 

 

②診断装置 

レントゲンや

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CT

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超音波診断装置などの診断装置も多く使用されています。

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超音波診断装置などの赤色コンセントで使用できる機器は停電時でも使用が可能ですが、自家発電機を備える病院でも大量の電気が必要なCTやMRI診断装置は使用できなくなってしまう場合があります。

 

 

③情報管理システム

電子カルテやPACSなどの病院内の情報管理システムは赤コンセントに接続されている病院なら使用が可能です。デスクトップの場合バッテリが無いため、停電時に一旦電源が切れますので電源の入れ直しが必要になります。

 

使用できなくなる施設もあると思いますので事前に確認が必要だと思います。

 

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④酸素・空気・吸引

非常電源に接続されている施設が多く使用可能だと思います。

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⑤手術室 

手術室などで 使用される機器は一瞬の停電も許されない機器があります。このような機器は緑色のコンセントを使用することで停電することなく使用が可能になります。無影灯などは赤色コンセントに接続されていれば使用が可能になります。

 

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⑥ナースステーション

 いつもより暗くなりますが、一部の照明がつきます。ナースステーションに赤色コンセントが無い場合、セントラルモニタが使用できなくなってしまいます。赤色コンセントがある場合でも、セントラルモニタにバッテリが無い場合、一旦電源が落ちてしまいますので立ち上げ直しが必要になります。

 

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⑦病室

白色コンセントに接続されているテレビや床頭台、ベッドの上下などが使用できなくなります。

自家発電の法定点検時にテレビや携帯などを赤コンセントに接続すると使用できることを患者さんに伝えた看護師さんがいる話を聞いたことあがあります。実際の停電時に患者さんの私物などを赤コンセントで使用していると、自家発電の使用時間が短くなってしまうので、必要機器以外の使用は行わないようにしましょう。

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⑧ 控え室・休憩所

一般的な控え室は白色コンセントが多いと思います。部屋の電気、パソコン、冷蔵庫など全ての機器が稼働しなくなってしまいます。楽しみにしていたアイスも溶けてしまいます

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⑨院内コンビニ、食堂

院内にあるコンビニや食堂は白色の一般電源なので販売ができなくなってしまうことがあります。お腹が空いてしまいます。 

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最後に

災害などによる停電はいつ発生するかわかりません。 

停電時でも機器が安全に使用できるよう、医療機器は適切なコンセントに接続するようにしましょう。また、バッテリが接続されていない機器はどれか、電源が供給すれば自動で再起動するのか、しないのかなど確認してリストを作成すると役に立つことがあるかもしれません。さらに、必要に応じてバッテリを付け足すことでより安全に使用が可能となります。

事前の確認が大事ですのでお時間がある時に確認してみて下さい(^_-)

 

 


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