今回は輸液ポンプ使用中の輸液セット間違いによるアクシデントについてお話していきます。
輸液ポンプはテルモ・JMS・トップ・ニプロ・アトムなど多くのメーカーから販売されております。
使用する輸液セットも各社から販売され、種類によって太さや長さが異なっております。このため機器にあった輸液セットを使用しなければ行けません。
輸液ポンプと輸液セットの組み合わせ間違いにより、輸液が設定より多く患者さんへ投与されてしまうということが発生してしまいます。セットによっては過少投与になることもあります。
例を挙げて紹介していきます。
患者さんが他院から転院されてきました。
在宅などで栄養状態を維持・改善するために高カロリー輸液を行うため、右胸部にポートがあり、輸液セットが接続されていました。
病棟で輸液を80ml/hでの投与指示が出ました。
看護師さんは輸液セットが接続されていたため、このルートを使用して投与することにし、院内にあるJMSの輸液ポンプにセットし、速度が80ml/hで指示と間違いが無いことを確認しスタートを押しました。
数分後、輸液ポンプの使用状況を確認し、問題なく稼働していました。
しかし、2時間後にアラームが鳴ったので確認してみると500mlの薬液が無くなっていました。(設定より約3倍の速度)
ここで、看護師さんは薬液が無くなったのは輸液ポンプが故障しているからだと考えました。状況をリーダーに伝え、二人で輸液ポンプの故障を疑い、機器を変えてみることにしました。
そこへ、たまたま病棟ラウンドをしていた臨床工学技士が看護師さんの「ポンプ交換しなきゃ」という言葉が聞こえ、使用状況を確認することになりました。
行ってみると、 右胸にポートがあり、テルモの輸液セットが接続されていることを確認したため原因は輸液セット間違いと気づき、輸液セットの交換を行うよう提案しました。
少し見づらいかもしれませんが、JMS輸液セットとテルモ輸液セットでは径の太さが違っています。テルモ輸液セットの方が一回り以上太くなっています。
このため、JMS輸液ポンプの設定が流量制御(jc JY表示)になっていた場合、アラームが発生せず速度が大きく変わってしまいます。
輸液ポンプは太さが異なる他メーカーの輸液セットでも使用できるものがあります。
こんな使い方をする人はいないと思いますが、経腸栄養の回路や
院内で一番径の細い延長チューブでも問題なく(気泡アラームが点灯することなく)接続できてしまいます。
最後に
輸液ポンプの回路はメーカーによって径が異なります。輸液ポンプ使用時は各メーカー専用の回路を使用する必要があります。
院内でメーカーが統一されている場合でも、他院から転院して来た患者さんや、在宅治療を行なっている患者さんに接続されてきた輸液セットは院内の規格と違う場合があります注意が必要です。
輸液ポンプを使用した際に流量が大きく異なることがあるため、転院時に使用されてきた回路は、院内採用の輸液セットに付け替えることをお勧めいたします。
また、流量が多く流れてしまった場合は機器故障だけでなく、輸液セットや手技に問題がなかったのか検討してみてください(^_-)