今回は心肺蘇生のガイドラインについてお話していきますね。
蘇生のガイドラインは2005年に国際蘇生協議会からガイドラインが発表され、5年ごとに内容が更新されています。この内容を元に、各国や地域が各々の事情に合わせた蘇生ガイドラインを作成しています。
日本では日本蘇生協議会(JRC)がガイドラインを作成しています。
今回はAHA(American Heart Association)をもとに、医療従事者が行う、一次救命処置[BLS(Basic Life Support)]について、2015年版に沿って2010年版と比較しながらお話ししていきます。
2010年版では「心肺蘇生の普及・実施のための方策」が盛り込まれていました。
2015年版では、胸骨圧迫とAEDの使い方に内容を絞った短時間の講習、小学校から始まる学校教育への普及や119番通報時の口頭指導の充実に関することなどが強調された内容になっています。
1.反応確認と救急要請
2010版では「呼吸をしていない、または正常な呼吸をしていないかどうかを判断しながら, 反応の有無を確認すべき」とされていました。
2015版では、「周囲に助けを求めなければならないが、救急対応システムへの完全な出動要請よりも、引き続き呼吸と脈拍の同時評価を行う」に変更されました。
2.早期の胸骨圧迫開始
呼吸がないか異常な呼吸(死戦期呼吸)が認められる場合、またはその判断に自信が持てない場合、心原生、非心原生に関わらず早急に胸骨圧迫を開始することが強調されました。
心停止直後、死戦期呼吸と呼ばれる、しゃくりあげるような呼吸がみられることがあります。これは顎が動いていますが、胸の動きは見られず、息をしていない状態です。このような場合など、呼吸しているか迷った場合はすぐに胸骨圧迫を始めるべきと強調されました。
3.早期のAED開始
2010版では「現場で AED がただちに使用可能な場合、救助者は胸骨圧迫からCPRを開始し、できるだけ迅速に AED を使用すべきである」とされていました。
2015版では、「AEDがただちに使用可能な場合、できるだけ迅速に AED を使用する
」に変更されました。
3.胸骨圧迫のテンポは100〜120回/分
2010版では「100回/分以上のテンポで胸骨圧迫を行う」とされていました。
2015版では、「100〜120回/分のテンポで胸骨圧迫を行う」に変更されました。
今までは、圧迫回数が多いほど生存率が高く, 圧迫回数が少ないほど生存率が低いという研究結果をもとに100回以上となっていました。今回、120回を超えると胸骨圧迫の深さが浅くなってしまうという研究結果をもとに上限が決められました。
4.胸骨圧迫の深さは5cm以上6cm未満
2010版では「成人の胸骨圧迫は5cm以上押す」とされていました。
2015版では、「成人に対して5cm以上の深さまで胸骨圧迫を行うべきであるが、過度に深く(6cmを超えない)ならないようにする」に変更されました。
これまでは胸骨圧迫の深さの限界が指定されていなかったため、力強く圧迫してしまい、損傷の危険性がありました。6cm未満を特定するのは難しいと思いますが、大事なことは、5cm以上にすることです。5cm以上の圧迫は、5cm未満に比べて良好な予後が期待できます。
5.胸郭を完全にもとの位置に戻してから次の圧迫を行う
2010版では「次の圧迫前に心臓に血液を完全に充満させるため、圧迫を行うたびに胸郭が完全にもとに戻るようにすべき」とされていました。
2015版では、「胸郭が完全にもとに戻るようにするため、救助者が圧迫と圧迫の間、胸部に持たれない容易にする」に変更されました。
胸骨圧迫することを意識しすぎるあまり、圧迫したまにしていると心臓に血液が戻りにくくなり、血液循環量が不足してしまいます。そのため、心臓、頭、全身への酸素量がへり予後不良となってしまいます。
6.胸骨圧迫の中断を最小限にする
2010版から「1分間あたりの圧迫回数を最大にするため、胸骨圧迫の中断の頻度および時間を最小にする」が継続されました。
2015版では、「心停止を起こし、高度な気道確保を伴わずにCPRを受けている成人に対し、目標とする胸骨圧迫時間比をできるだけ大きく、60%以上に設定してCPRを実地する」が加わりました。
胸骨圧迫を交代するタイミングや、AED準備や実地するときに中断しなけれないけない時があります。この時間を短くすることによって血液循環量を上げ、救命率を上げることができるようになります。圧迫中断は10秒を超えないようにします。
7.6秒ごとに1回人工呼吸を行う
2010版では「二人の救助者による心肺蘇生中に高度な気道確保器具が留置された場合、圧迫と圧迫のあいだに呼吸を同期させようとせずに、6〜8 秒ごとに1回(1分間に8〜10回)人工呼吸を行う」とされていました。
2015版では、「胸骨圧迫を継続しながら、高度な気道確保を伴う心肺蘇生中、6 秒ごとに1回(10 回/分)人工呼吸を行うこと」に変更されました。高度な気道確保を伴わない場合は圧迫・換気比が30対2になるようになっています。
8.119番通報で対応方法を教えてもらえる
1〜7について不安がある方は、119番通報をすると対応方法について口頭で指示してもらえます。救急車要請のあと、対応に不安な方は電話を切らずに指示に従って行動してください。また、心肺蘇生を行っている人に指示を伝えるのも大事なことですので、コミュニケーションを取るようにしてください。
日本蘇生協議会(JRC)の一般市民に置ける一次救命処置(BLS)ガイドラインでは以下のような流れになっています。
その他.院内心停止と院外心停止の対応分類
救命の連鎖が、院内心停止 [IHCA(in-hospital cardiac arrest)]と院外心停止[OHCA(out-of- hospital cardiac arrest)]の場合に分類されました。
AHA心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドラインアップデート参照
その他.ソーシャルメディアの活用
ソーシャ ルメディアを利用した生存率向上は明らかになっていませんが、スウェーデンの最近の研究では,携帯電話を利用した緊急指令システムを活用したところ、心肺蘇生開始率が上がったとの報告があります。ソーシャ ルメディアによる救命率上昇は今後さらに発展が期待されていると思います。
最後に
現在の心肺停止患者の救命率は約1~2%と言われています。
救命可能な心肺停止は発症後十数分以内です。
容態変化が目撃され、かつ蘇生行為を行うという条件が整わなければいけないので、救命率を上げるのがなかなか難しいかもしれませんが、日本での救命可能な心肺停止は全体の約10%と言われています。
今後、多くの人に一次救命処置(BLS)方法が広がり、多くの命が救われることを期待しています。
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