看護師さんが知らないと損するコツを臨床工学技士が伝授します

毎日多くの看護師さんや先生から医療機器の使用方法や操作のコツについて相談を受けます。頂いた相談に対する答えをブログを通してみなさんに伝えることにより、少しでも多くの人の悩みや疑問を解消できるお手伝ができればと思いブログの開設を行いました。

呼吸器回路を保持するクリップハンガーの使用方法について

今回は人工呼吸器を使用するときに、回路の固定に使用するクリップハンガーについてお話ししていきますね。

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でも、なぜクリップハンガーの話をするの??

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と思われた方、多いのではないでしょうか?

 

 

当院もそうですが、人工呼吸器の勉強会を開催してもクリップハンガーの説明まで行なっている施設はあまりないのではないでしょうか?そのため、なんとなく使用できているけど、正しい使用方法はわからないという方多いのではないでしょうか?

 

 

あまり意識されていない物品かもしれませんが、クリップハンガーは人工呼吸器を使用するときに回路を保持するため、とても重要な物品になります。

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クリップハンガーには、何度も再利用が可能なしっかりした作りのものや 

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単回使用のもの、

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 シングル回路用のものなどが販売されています。

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形はどれも違いますが、全てに共通している部分が一つあります。

 

 

それは先端部の形が丸い作りになっているということです。

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呼吸器回路ホルダーのクリップホルダーを保持する部分も丸い形に合うように作成されています。

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クリップハンガーを接続する際のポイントとして、少しの隙間を作り、ゆとりを持たせるようにします。必要時以外はキッチリ固定しないようにして下さい。

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丸い形のため、患者さんの位置に合わせて自在に向きを変えることができるようになっています。

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人工呼吸器を使用中に発生するトラブルの一つに、挿管チューブの計画外抜管がありますね。

 

計画外抜管は患者さんが自分で引き抜くこと(自己抜管)もありますが、患者さんの体動や、看護師さんが体位変換を行う際に発生(事故抜管)してしまうことがありますね。

 

計画外抜管が起きてしまうと、すぐに患者さんに呼吸補助を行わなければいけませんが、気付くのが遅れたために処置が遅れてしまうケースがあります。また、ほとんどのケースで再挿管を行わなければいけませんが、喉頭浮腫により再挿管が困難な場合もあります。

 

また、NPPVでマスク換気を行なっている患者さんの場合、体動によりマスクがずれたり、マスクと回路のコネクタが外れることがあります。

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このような場合には、低酸素症により脳に重大な後遺症を残したり、最悪の場合、亡くなってしまうことも考えられます。

 

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私はクリップハンガーの使用方法によって、事故抜管やチューブ位置のズレを軽減することができると考えています。

 

 

通常、呼吸器回路の固定は下の写真のようになっています。

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クリップハンガーを固定た場合、体位変換時は呼吸器回路ホルダーも同時に移動する必要がありますが、患者さんだけを動かしてしまうと回路が引っ張られてしまい、事故抜管の危険性が高まります。 

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 可動するようにしておくと、少しゆとりが生まれます。

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また、単回使用製品の場合、

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何度も移動していると破損してしまう場合があります。

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破損してしまうと、回路を保持できなくなってしまい、回路の重さで引っ張られてしまうのでチューブ位置がずれる危険性があります。

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このようなことが無いようにクリップハンガーはゆとりを持たせて保持し、フレキシブルに動く状態にすることがいいと考えています。

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さいごに

事故抜管やチューブ位置のズレが起きてしまうと、患者さんの正常な呼吸状態を保てなくなってしまいます。

クリップハンガーの保持方法で事故を完全に無くすことはできませんが、フレキシブルに可動させることによって、事故が起こり得る可能性が少しでも少なくなればいいと思っています。

 

よかったら参考にしてみて下さい(^_-)

 

 

 


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