今回は病院内でのエスカレーター使用時の注意点についてお話していきます。
エスカレーターの話の前に、先日友人に起きた出来事についてお話しさせていだだきます。
友人は30代の男性です。
家に帰る途中、駅の階段を歩いていたら、誤って転倒して顔面を強打してしまったそうです。
人生で初めて鼻血が出たそうです。
しばらくして鼻血は止まりましたが、顔面の痛みは残っていました。打撲の痛みかと思って一晩様子をもましたが、朝起きても痛みがあったため、病院で検査してもらいました。
レントゲン撮影して医師から告げられたのが、眼窩底骨折という診断でした。
数日後に手術を行いましたが、転倒時に神経も傷付いたため、今も少し顔面が麻痺しているそうです。
友人が早く回復することを心から願っています。
このように、30代の男性が自分のペースで歩けるはずの階段でも落下して怪我をしてしまうことがあります。
エスカレーター乗車中のふらつきによる怪我が多く報告されています。また、エスカレーターは階段と違って動いているので、自分のペースで移動できず、乗る時や降りるタイミングが取りづらいことがあります。特に、子供や
年配の方は転倒などによる怪我をされてしまうことがあります。
東京消防庁が平成15年1月1日から平成16年3月31日までの15ヶ月間に都内の駅や百貨店・スーパーなどで発生したエスカレーターに関わる事故で、救急要請があった事故を調査したところ、1300件を超えていたそうです。
救急要請が無い事故も発生していますので、エスカレーターでの事故はかなり多く発生していることが考えられます。
下の図は年齢別による事故数になります。
東京都に住んでいる人を参考に、人口10万人あたりの事故数に直すと、以下の表のようになっています。
0〜4歳と、高齢になればなるほど、エスカレーターでの事故が多いことがわかりますね。
80%以上の方が軽傷で済んでいますが、中には重篤や重傷をおってしまう方もいらっしゃいます。
約50%が立っていた時に、35%が乗り降りの際に事故が発生しています。
このような事故は駅やデパートだけではなく、病院のエスカレーターでも多く発生しており、転倒により骨折されてしまうケースが報告されています。
場合によっては、エスカレーターを利用したかたが転倒したことにより、下の患者さんが巻き込まれ、大きなケガをおったケースも報告されています。
転倒してしまう原因の患者さん要員としては、年齢や様々な疾病や怪我等による不調、薬を内服していることによるふらつきなどが考えられます。
環境要因としては、照明の明るさや、エスカレーターの速度が関係しています。
健常な方であればエスカレーターの速度は全く気にならないと思います。むしろ、もっと早ければ良いと思っている方もいるのではないでしょうか?
駅やデパートのエスカレーター速度は30〜40m/分が一般的です。
病院の場合は約半数ほどが30m/分で、残りの半数が20m/分台となっていると思います。
エスカレーター速度は20m/分台が事故の起きにくい速度と言われています。
余談ですが、以前「おばあちゃんの原宿」で有名な巣鴨に行ったことがあります。
その際に西友に行きましたが、非常に遅いエスカレーターがありました。その時はあまりに遅すぎたので、友人と笑いが止まりませんでした。
現在調べてみると、速度は20m/分でした。約20年前に日本で一番初めにエスカレーターの速度を落としたショッピングセンターだそうで、高齢者への安全を配慮された素晴らしい取り組みだったと思います。
では、病院でも事故が起きないように速度を落とせば良いのでは?と考えると思います。
エスカレーターは速度変更可能なものもありますが、機種によって500〜3000万円程かかってしまうため変更を行えていない病院が多いと思います。
このため、各病院では転倒転落が起きないように、ポスターを貼ったり、スタッフを配置したりと様々な工夫がされています。
しかし、それでも30m/分のエスカレーターでは年に数件事故が発生することがあります。
事故が起きないよう、高齢や体調不良の方にはエレベーターを使用してもらうことが良いと思います。
しかし、待ち時間を嫌がる方も多くいるため、外来・病棟看護師だけでなく、訪問看護師など医療従事者全体での声掛けによる啓蒙活動が必要なのではないかと思っています。
特に、杖を使用した患者さん
歩行器使用中の患者さん
足のケガやふらつきなど歩行の不安定な患者などに注意が必要です。
また、ベビーカーを押しながらエスカレーターに乗る人もいますので、注意が必要になります。
さいごに
病院なので安心されている患者さんが多いと思いますがエスカレーターや思いもよらないとことでの転倒が報告されています。
エスカレーターでも重症になる事故が起きていることを知らない患者さんも多いと思います。少しの声掛けと気遣いで防げることがありますので、担当の患者さんなどへの声掛けを行なってみてください(^_-)