ここ数日、除細動器パドル部分の清拭に除菌クロスを使用すると成分の1つである界面活性剤によって通電できなくなるため、除菌クロスでの清拭は行わない方がよいとの話が全国に広がり、私の方にも数件問い合わせが来ていました。
私の経験から除細動器の清拭に除菌クロスを使用しても問題ないと考えており、当院では除菌クロスを使用して清拭を続けていくことになりましたので、その根拠を説明していきたいと思います。
当院が使用している除菌クロス
当院がここ数年使用している除菌クロスはサラヤの環境清拭クロスを使用しています。
あるメーカーの取扱説明書に記載されている清拭に使用できる薬剤に界面活性剤は含まれておりません。しかし、使用禁忌にも記載がありません・・・
界面活性剤が入った除菌クロスなどは使用してもよいのでしょうか??
清拭後パドルに薬剤が残ったら
当院でも長期間除菌クロスで清拭を行ってきました。
除菌クロスは物によってはクロスに含まれる水分量が多いものがあり、清拭後に薬液が残る場合があります。
そのまま放置すると薬液が乾燥して写真のようにパドルが白くなってしまうことがあります。
パドルに薬液が乾燥して残ったまま使用しても良いのか
パドルに薬液が乾燥して残った状態で患者さんに使用すると設定通りの出力(J)ができるのでしょうか。
除細動器の出力を実際に使用する150Jに設定し、チェッカーを使用して出力を確認してみると、今回は150.9Jと正常な値になりました。複数台で確認してもほぼ設定どおりの出力となり異常はみられませんでした。
これらの結果から、除菌クロスを使用してパドルに薬液が乾燥して残っていた場合でも患者さんへの影響は無いと考えられます。
しかし、薬液が乾燥して残ってしまうとその部分の抵抗が高くなり、放電時に熱がもちやけどが発生する危険性がありますので、薬液が残らないよう乾いたペーパーなどで拭き取ると良いと思います。
また、除菌クロスなどで清拭し、パドルや除細動本体の金属部分が濡れた状態が続くと、金属部分が腐食することがあります。
しかし、本体側の金属部分が腐食したように見えていてもパドルとの接触が悪くなることはほとんどありません。パドルの接触状態が不良の場合は、腐食以外の原因が考えられます。
パドルの接触不良により使用前点検(簡易動作チェック)が通らない場合の対処方法
使用前点検を行っていくときに、パドルの接触不良により点検が進んでいかない場合があります。
TEC-8300シリーズではパドルが機器側と接触が正常に出来ている場合は左下写真のように黄色く点灯します。また、接触が悪い場合には右下のような赤いランプが点灯します。
TEC-5500シリーズでは下の写真のように詳細に正常(緑)・不安定(黄色)・接触不良(赤)のランプがつきます。
このような場合の原因と対処方法について説明していきます。
パドル接触不良の原因
上記のようなパドル接触不良になるほとんどの原因は、パドルと機器側の接触が悪くなることにより発生します。
本体側の金属部分とパドルの接着状態が悪いと接触状態が悪くなります。
対策①
パドルやパドルケーブルに異常がないことを確認するためにパドル同士を合わせます。
この確認で接触状態に異常がなければ、機器本体とパドルの接触不良が原因の可能性が高いです。
長期間使用していくと本体側の金属部分が下がっていってパドルとの接触が悪くなることがあります。この部分を上げることによって接触状態が改善することがあります。
対策②
パドル同士を合わせた場合に接触状態が不良の場合、成人用パッドと小児用パッドの接続不良やケーブルの断線の可能性があります。
パッドは1つに見えますが、成人用パドルの下に小児用パドルが隠れています。
成人用と小児用パドルの接触が悪くなることにより使用前点検が通らないことがあります。
その場合は成人用パドルの金属部分をマイナスドライバーなどで上に上げることで小児用パドルとの接触が改善します。
対策①、対策②で改善しない場合はパドルのケーブル破損が考えられますので他の除細動器パドルと交換することや販売メーカーへ相談することをお勧めします。
さいごに
パドルを使用した使用前点検で接触状態が不安定になることがあります。
一部では除菌クロスが原因との話が上がっていますが、私は除菌クロスが原因によることはなく、機器本体やパドルの金属部分の接触不良によるものと私は考えております。
使用前点検がうまくいかない場合には今回紹介した対策を試してみて頂ければと思います。