医療機器の話をする前に、なぜ安全に機器を操作する必要があるのか話をしたいと思います。文字が多くなりますが、とても重要なことなので書いていきます。
自分が医療に関わる以前は、病院で医療ミスはほとんど起きていないと思っていました。しかし、医療安全について海外や日本の症例を調べていくと、患者さんへ違う薬剤を投与した、機器の使用間違いにより後遺症を残してしまったなど、細かいミスを数えれば毎日多くの医療ミスが世界中で発生していることがわかりました。
もし医療ミスを起こした場合、自分にどのような賠償が発生するのか過去の事例を2つ紹介致します。
①人工呼吸器加湿器に蒸留水を入れようとしたが誤ってエタノールを入れてしまい急性エタノール中毒で患者が亡くなってしまう。京都大病院で2000年2月、人工呼吸器に消毒用エタノールをご注入され中毒死した少女(当時17歳)の両親が、大学と担当医や看護師らに損害賠償を求めた訴訟で、大学とエタノール誤注入に直接関わった看護師4人に総額2813万円の支払いを言い渡した。
②難治療性胸水の治療のため転院されてきた患者、リドカインの点滴を注入された状態で医師に付き添われ搬送されてきた。看護師は点滴を病院の輸液ポンプに付け替える作業を行う際、クレンメを閉じないまま輸液ラインを外したため、薬剤が大量に患者に注入された。患者はその直後に痙攣し、心肺停止、意識不明の状態に陥り、3ヶ月後に多臓器不全により死亡した。判決では、クレンメを解放したままラインを外すという行為が、患者の生命に関わるエラーであり、ラインを外す前にクレンメを閉じることは看護師として基本的な義務であるから、看護師に過失があると認められ、原告側に対する5000万円の損害賠償請求が認められた。
呼吸器の水補充、輸液ポンプの付け替え作業など、日常的に行われている作業でも少しのミスがきっかけで大事故が発生し、患者が亡くなり数千万円の損害賠償請求をされる事例が発生しております。
このような事故を起こす当事者にならないためにも、機器の正しい操作方法を理解し、常日頃から正しい操作を体に覚えこませ、患者急変時などの緊迫した状況下でも安全に機器の操作ができることが自分の身を守れる唯一の手段だと思います。